ヒックの法則って何? ~選択肢はカテゴリ分けをしよう~

2018年11月19日月曜日

ウェブサイト作成・運営

ヒックの法則に基づいたWebサイト設計

今日は、Web技術の話というより、デザインの話です。


皆さんは、「ヒックの法則」というものをご存知でしょうか。

1951年にウィリアム・ヒックという人が提唱した法則です。
(後にレイ・ハイマンという人がさらに発展させたそうです。)

実はこれは、ウェブサイトを作る上で、気を付けるべき教訓を孕んだ法則です…

ヒックの法則とは


ヒックの法則の意味が分からず困惑する女性

どういう法則かというと、、



「選択肢が多すぎると、選ぶ気しないわ」



一言でいうと、こういうことです。



もうちょっと正確に言うと、

「選択肢が多すぎると、選ぶのに時間がかかる」



ってことです。


一応数式で書くと、こういう感じ。。。


T = a + b × log2 (n+1) 

 T = 選ぶのにかかる時間
 a = 意思決定以外にかかる、余計な時間
 b = 以前の実験から得られた、意思決定にかかる平均的な時間
 n = 選択肢の数


出ました、log。


高校生の時、丸暗記でテストを乗り切ったlogです。
(理系の学生しか習わないんでしたっけ?)


たしかグラフで書くと、こういうやつ。



ヒックの法則の選択肢と時間の関係


上記の芸術センス溢れるグラフからも分かるように、ここで言いたいのは、n(選択肢の数)が増えるとT(選ぶのにかかる時間)も増えるということですね。

logなんかどうでも良いのです。



もっと言うと、時間がかかるだけでなく、「選ぶことを放棄されてしまう」ことが多いという実験結果もあります。




ジャムの法則


ジャムの法則

コロンビア大学のシーナ・アイエンガーさんが行った実験では、「選択肢が過剰に多いと、人は選ぶことをやめてしまう」ということが明らかになっています。


ジャムの試食コーナーでの、購買者の行動を観察した実験です。

シーナ・アイエンガーさんは、ジャムの試食コーナーにおいて、6種類のジャムを並べた場合と、24種類のジャムを並べた場合の、どちらが売れるかを比較しました。


その結果は以下のようになりました。

ジャム24種類ジャム6種類
試食60%40%
購入3%30%


試食してくれた人に関しては、60%対40%ですから、たくさんジャムを用意したときの方が多いですね。

「うわージャムがたくさん!ちょっと試食してみようかしら!」

ということですね。


しかし、実際にジャムを購入した人の比率を見てみると、ジャムを6種類しか並べなかった時の方が、なんと10倍も売れたのです。

つまり、

「あ~、あれもおいしい、これもおいしい。あ~!もう選びきれないわ!!」

ということですね。


さっきのグラフで言うと、選択肢が増えるほど、選択にかかる時間は増えるわけですから、その時間が現実的な値じゃなくなった時、人は選択を放棄してしまうんですね。


これ、ブログやウェブサイトを作るときにも心しておきたい法則です。



ヒックの法則のウェブサイトへの応用


ヒックの法則を応用したWebサイト作成

応用というか、教訓なのですが、

以前、少しだけ紹介した、僕がフィリピンに住んでいた時に作ったブログでも、ガッツリこの過ちを犯しています。

90 Japlish Words / Wasei Eigo List >>

この記事では、日本に興味がある外国人に向けて、「和製英語」を紹介しています。

記事の題名の意味は、「和製英語90選」


90選。

ジャム24種類なんて目じゃありません。


記事冒頭の目次で、90個の和製英語がズラーーーーっと記載されており、本文では、その和製英語一つ一つについて解説がされています。


目次から気になる和製英語を選んでもらいたかったのですが、多分これを見た外人さんは、「うゎ…!」となったことでしょう。

Oh... ジャパニーズ... クレイジー
となったことでしょう。


選択肢をズラーっと並べるのは、かえってユーザーの離脱を招く原因になってしまいますので、控えましょう。
(離脱というのは、そのウェブサイトを見るのをやめてしまうということです。)


これは、悪い例です。



でも、網羅性は大事


Webサイトの網羅性が足りず、機嫌が悪くなった女性

じゃあ選択肢をたくさん用意するのがダメなのかというと、そうでもないのです。

以前、「店舗や会社のホームページの役割とは?」という記事にも少し書きましたが、それぞれのウェブサイトには、「強さ」のようなものがあります。

この強さとは、「Googleからどれほど評価されているか」ということで、「検索結果のどれぐらい上の方に表示されるか」ということに関わってきます。


Googleがウェブサイトを評価するとき、大事な評価基準に、「検索キーワードに対する、記事の網羅性」があります。

Googleは、検索者の悩みを解決して、満足させられるようなウェブサイトの評価を高くします。


人々がある検索キーワードでGoogle検索を行うとき、その人は、何か知りたいことがあるから検索を行っているはずですね。

その人の知りたいという願望を満たすために、ウェブサイトの情報は、その悩みに対して極力「網羅的」でなければならないのです。


記事を読み終わっても、消化不良の状態であれば、検索者は「戻る」ボタンを押して、他のウェブサイトを見に行くことでしょう。

読み手がそういう動きをしているということは、しっかりGoogleさんにはバレてしまいます。

そして、「なんだ、このサイトはあんまり網羅的じゃないんだな。よし評価下げよう。」と、決断を下されてしまいます。


なので、必ずしも選択肢を少なくすれば良いということではないのです。


では、多くの選択肢をウェブサイトに表示したいときは、どうすれば良いのでしょうか。




ヒックの法則にならってカテゴリ分けをしよう


こういった問題に対して一般的に取られる対策としては、「カテゴリ分け」です。


選択肢をズラーっと並べると分かりにくいので、ジャンルごとに一旦分けるという方法です。

ヒックの法則に従ったカテゴリ分け


いきなり選択肢を選ばせるのではなく、まずはカテゴリを選んでもらい、そのカテゴリの中から選択肢を選んでもらえば、一回の選択の時間は短くて済むということですね。


読み手にストレスをかけることなく、現実的な選択時間で選んでもらえるような工夫をするべきだ、というヒックさんの教えを胸に刻んでおきたいものです。


ヒックの法則に関する書籍


ヒックの法則など、人間の行動心理に関する法則を、Webデザインに応用することに興味が湧いた方には、以下の書籍がおすすめです。


ヒックの法則だけでなく、様々な人間の性質を元に、ユーザーが使いやすいWebデザインを実現する方法について詳しく書かれています。

私もWebサイト作成の際のバイブルとして活用させて頂いています。
職業柄、Webデザインに関する本は結構読みましたが、ここまで論理立てて、分かりやすくWebデザインについて書かれている本は他にはないのではないかと思います。

技術書ではありませんので、もちろんWeb初心者の方にも難なく理解できる内容だと思います。
また、題名にもあるように、プロのデザイナーでなくても、スラスラ読むことができます。

WebサイトやWebサービスを作成する予定の方は、ぜひ一度読んでおくと、論理に基づいた、しっかりとしたサイト設計ができるようになるのではないでしょうか。

これを読んだか読まなかったかで、その後作成するWebサイトの使いやすさが大きく左右される… と言っても過言ではないぐらい、Webデザインの本質を、分かりやすく伝えてくれる良書です。

興味が湧いた方は、是非ご一読下さい。


以上、ヒックの法則でした。